動脈硬化・糖尿病のリスク
高橋先生

東京国際クリニック 院長・循環器科
高橋先生

動脈硬化や脳血管疾患・心臓疾患等と歯周病の関係

歯周病と動脈硬化の関係は、生活習慣病の交絡因子と考えられます。歯周病が進むと炎症を起こす物質(炎症性サイトカイン)が産生され、血中に放出されます。

炎症が起きているところには「マクロファージ」と呼ばれる白血球の一種が集まります。血中から血管の壁に入り込んだ酸化した悪玉コレステロールをこの「マクロファージ」が食べて泡沫細胞に変わるのです。その結果、血管の壁が厚くなります。
以上が、動脈硬化の仕組みですね。脳梗塞や心筋梗塞はこの動脈硬化が原因で起こります

歯周病と関係がある感染性心内膜炎のリスク

歯周病との直接的な関係が報告されているのは「感染性心内膜炎」という疾患です。
傷ついた歯茎から細菌が血中に入ると、心臓の弁に付着して菌の塊が出来上がります。
この塊が大きくなると弁の機能を妨げるようになります。

進行すると、心不全の引き金になるなど命にかかわるリスクをもたらします。

糖尿病歯周病の方は相互の検査を検討してください

歯周病と糖尿病の関係は非常に複雑な関係です。
たとえば、血糖値が長い間高ければ抵抗力が落ちます。したがって歯周病にかかりやすくなるのです。
また、Ⅱ型糖尿病の方は食生活が乱れている方も多いです
。その点も歯周病の原因になるリスクがあるんですね。
糖尿病の方は歯周病の検査を受けられたほうがよいと思います。
それと同様に重度の歯周病の方は、血液検査を受けて、糖尿病がないか確かめたほうがよいでしょう

私の患者様にも糖尿病の方がいらっしゃいますが、先日歯科に紹介したところ歯周病が見つかりました。「歯周病を治療すると、糖尿病の指標である『ヘモグロビンA1C』の値が1%下がる」という報告が海外でも出ておりますし、並行して治療を進めることが大事ですね。

肥満と歯周病の関係

歯周病の方々に肥満の傾向が見られることは以前から指摘されています。その因果関係はまだ十分には解明されていませんが、遺伝や生活習慣等が関係していると考えられています。

たとえば、子供の頃からたくさん食べる習慣を身につけて育つと、脂肪細胞が増えて肥満気味になる可能性が上がります。しかしこれは生活習慣に起因していますから、やはり個人の努力での回避が必要になりますね。

動脈硬化・糖尿病と歯周病をスムーズに改善するために

感染性心内膜炎と歯周病との因果関係ははっきりしていますが、動脈硬化や糖尿病についてはまだ不明確な部分が多いです。

喫煙や不規則な生活習慣ほか、さまざまな要素が絡んでいると考えられていますが、さらなる研究が必要です。そのためには医科がより積極的に、歯科と連携する仕組みづくりが重要ですね。

現在当院では、歯周病の検査を含めた人間ドックを開始するところです。一般の方々には、歯周病と全身疾患の関連性について深く認識している医師への健康相談をお勧め致します。

炎症が起きているところには「マクロファージ」と呼ばれる白血球の一種が集まります。血中から血管の壁に入り込んだ酸化した悪玉コレステロールをこの「マクロファージ」が食べて泡沫細胞に変わるのです。その結果、血管の壁が厚くなります。脳梗塞や心筋梗塞はこの動脈硬化が原因で起こります。