東京国際クリニック 婦人科
國井(くにい)先生
妊娠中の歯科治療は妊婦時期を確認しましょう
赤ちゃんに対する影響は妊娠時期によって異なります。中枢神経が形成され、心臓や目、手足などの重要な器官が作られる妊娠13週までは「器官形成期」に該当し、胎児に重篤な奇形が生じるリスクがある期間のため、レントゲン検査がある歯科の受診は避けたほうがいいですね。
しかし、この時期を過ぎたら、問題ありません。
ただし、ロキソニンやボルタレンのようなプロピオン酸系の鎮静剤は、子宮を収縮させる作用がありますから避けましょう。また、静脈麻酔を伴う外科処置は、胎盤を通って麻酔が胎児に届きますから同じく避けてください。それ以外の一般的な歯科診療なら問題ないですね。
妊婦中の歯を口腔ケアで守りましょう
「妊婦は、胎児に栄養を取られて歯がボロボロになる」そんな噂が流れることがあるようです。しかしその噂に医学的な根拠はないんですよ。
妊娠中に歯の状態が悪くなる理由は「口腔ケアが不十分だから」。つわり等の理由でブラッシングが難しいときは、刺激の少ない歯磨き粉を使ったり、お水でよくゆすいだりして、お口の中を清潔に保つ努力をしていただきたいです。
妊婦中に歯周病が悪化して高まるリスクとは
歯周病が悪化すると「サイトカイン」と呼ばれる炎症物質が血管に広がります。このサイトカインが集まると「プロスタグランジンE2」という物質が増える引き金になるんです。
プロスタグランジンE2には、子宮の収縮や頸管の拡張を促す作用があります。
そのために、流産や早産につながってしまうと考えられています。
妊娠28週以前に早産してしまうと障害を持った状態で生まれてしまう確率が高まります。それに低体重児の場合は免疫が不十分ですし臓器も整っていません。生まれる時期が早ければ早いほど成長に大きな支障が出るリスクが高くなります。だから、妊婦中も妊婦期間を確認して、歯科検診や治療を検討してくださいね。
妊娠後のママに歯周病が増えています
妊娠中のママは歯周病になりやすいといわれていますが、その背景にはさまざまな原因があります。妊娠による女性ホルモンへの影響、つわりから体の免疫が低下して、歯肉炎や歯周病に影響を与えます。
とくに妊婦中のつわりの影響は、やはり大きいですね。
つわりがひどいと歯ブラシを口の中に入れるのも苦痛になります。
ブラッシングの回数が減るために歯周病になりやすい口腔環境になってしまうというわけで、歯周病のリスクが高まってしまうんです。
もちろん、妊娠中のママも歯周病予防はできますよ。歯周病専門の歯科医院に行けば、妊婦さんの立場に配慮した診療をしてくれるでしょう。ブラッシングについての相談にも乗ってもらうことだってできますよ。歯科医院に行かずに歯周病が進んでしまうよりは、行ったほうがいいですね。